vol.104

道徳教育の教科書
一般社団法人日本図書教材協会会長
菱村 幸彦

 先ごろ、文部科学省の有識者会議で小・中学校の道徳の時間を「特別の教科 道徳」(仮称)にする提言がまとまった。「特別の教科」の中身はまだ分からないけれど、今後、道徳の時間に教科書を使用することは間違いない。

 懇談会では、道徳の教科書を「心のノート」のように文部科学省著作教科書とする意見もあった。が、結論として民間の検定教科書を用いることが望ましいとしている。その理由として、@出版社の切磋琢磨で質の高い教科書が生まれること、A複数の民間発行者が作成する検定教科書の方が多様な価値観を反映できること、B既に複数の出版社で副読本が作られており、それが教科書になっても特に問題が生じるとは考えにくいこと等を挙げている。現在、副読本を発行している出版社は、教科書分野への進出のチャンスと考えるべきであろう。

 ただ、道徳のように価値観がベースになっている教科の教科書が、検定制度になじむかという問題がある。懇談会は、道徳の教科書も検定は可能であるとし、公正性や正確性など、検定の基本を押さえた上で、出版社の創意工夫が生かされる形の検定が望ましいとしている。

 今後、文部科学省において、「特別の教科 道徳」の学習指導要領や検定基準の具体的な整備が行われることになる。また、教科書の無償給与のための予算措置も必要となる。

 検定教科書を整備するとなると、どんなに急いでも、編集に1年、検定に1年、採択に1年の計3年を要する。で、道徳教育の教科化が正式に決まり、学習指導要領や検定基準の整備が行われても、直ぐに教科書が間に合うわけではない。当面は、引き続き「心のノート」の活用が必要となる。

 なお、有識者会議の議論では、検定教科書が整備されるとしても、道徳教育の特性から、検定教科書とともに、多様な教材を引き続き有効に活用していくことが重要であるとしている。

〜図書教材新報vol.104(平成25年12月発行)巻頭言より〜