vol.105

教材の配列を考える
一般社団法人日本図書教材協会顧問
筑波大学・上越教育大学名誉教授
辰野 千壽

 学習効果を上げるために、これまで教授の指針として「既知より未知へ、一物より一般へ、具体より抽象へ、有形より無形へ、易より難へ、近より遠へ、簡より繁へ」と進むことがあげられている。

 この原則は教材(問題)の作成・提示においても当てはまる。しかし、配列の学習に及ぼす影響は、学習者の能力・性格によっても異なる。例えば、「易より難へ」の配列についての研究の例をみると、ビネー式知能検査では、問題が易より難へと年齢順に並んでおり、子どもが全部できる年齢の問題から順次難しい問題へと進み、五、六問続けてできなくなった所で打ち切るようになっている(連続的方法)。この方法ではどんな子どもでも最後には続けて失敗することになる。そこで、ある研究では、このやり方を変え、易しい問題と難しい問題を順不同に出しながら進ませ、続けて失敗した感じを少なくするようにした(調整的方法)。能力の同じ子どもを適応性の高い子どもと低い子どものグループに分け、同じ問題でテストした。その結果をみると、適応性の高い子どもは連続的方法と調整的方法による得点の違いは無かったが、適応性の低い子どもは、連続的方法よりも調整的方法の方が得点が高くなった。不適応の子どもは、失敗に対する抵抗力が弱いので、失敗を続けると知能の働きが悪くなると考える(ハット 一九四七)。

 また、学習の能率は、同じ解き方の問題を続けて提示するか、異なる解き方の問題を交ぜて提示するかにより違う(ルーチンス 一九四二)。同じ型の問題を続けると解き方の構えができ、異なる型の問題の解決への移行が難しくなる。適度に異なる解き方の問題を交えて提示する方が構えが柔軟になり成績がよくなっている。

 このような研究をみると、教材の作成や活用においても、学習者の能力・性格を考えて練習問題の配列を工夫することが必要である。

〜図書教材新報vol.105(平成26年1月発行)巻頭言より〜