vol.108

デジタル教材―求められる負の効果についての研究
一般社団法人日本図書教材協会理事長
星槎大学大学院教授
新井郁男

 つい最近出版された、『デジタル・デメンチア』と題する著書を読んだ。「子どもの思考力を奪うデジタル認知障害」という副題がついている。これはドイツの精神医学者マンフレド・シュピッツァーがまとめた本Digitale Demenzの邦訳(小林敏明訳・村井俊哉監修)である。専門ではないので詳述はできないが、最近のわが国における教科書デジタル化の動向に照らして注目したのは、Facebookのようなリアルなコンタクトを欠くデジタルなソーシャル・ネットワークを使うと、子どもたちの脳の部位が小さくなり、その結果社会的な資質能力の低下につながるに違いないということを示唆する研究結果である。

 この結果をどのようにとらえるかは、関連の調査などに照らして検討することが必要であろうが、考えさせられたのは、デジタル化された教科書やその他の教材自体の問題というよりは、授業などの教育実践において、それをどのように使うかが重要ではないかということの再認識である。

 わが国において目下政策的に推進されているデジタル教科書は、指導者用と学習者用に分けられ、後者については「子どもたち同士が教え合い学び合う協働的な学びを創造していく」ことが重要であるとしている。しかし、公益財団法人教科書研究センターのプロジェクトのいっかんとして筆者がこれまで視察させてもらったかぎりでは、協働的な学びといえるような場面は極めて少ないように思われる。

 ICTによって、オンライン学習のように個別学習を盛んにすることも重要であるが、同時に、教師と子ども、子ども同士のコミュニケーションを活発にしないと、脳の発達に好ましくない影響を及ぼし、学力だけでなく社会性の発達にも負の影響を及ぼすのではないかと思われる。

 このような観点からの実証的な研究がわが国でも行われるようになることを訴えたい。

〜図書教材新報vol.108(平成26年4月発行)巻頭言より〜