vol.122

「目に見える思考」方略を考える
一般社団法人日本図書教材協会顧問
筑波大学・上越教育大学名誉教授
辰野千壽

 今日の教育では、自ら考える力の育成が重視され、種々の指導方法が考えられ、その一つに観察学習・模倣学習がある。これは教師が指導する思考や問題解決の過程を観察し模倣することによって行われる。この学習では、認知的徒弟制が提唱されている(コリンズ1989)。

 この方法では、@教師が思考過程の手本を示し、生徒が観察・模倣する段階、A教師が生徒を手取り、足取りコーチングする段階、B教師が助言やヒントを与えながら、生徒がひとりで学習する段階、C支援を減らしながら、生徒を自立させる段階―に分けている。

 このような模倣による指導の効果を高めるために、近年教師の示す思考過程をできるだけ「目に見える思考」(visible thinking)に変える方略が勧められている。これまでも、思考の過程を可視化するため、図解、文章化、発話思考法や教育機器使用などの方法が工夫されてきたが、ここでは発話思考法(thinking aloud method)について述べる。

 この方法は、本来、思考や問題解決などの認知的処理過程の目に見えない内的過程を本人に発声させ、観察可能な行動に変え、これを分析、研究する方法であるが、ここでは、それを教師の指導に応用し、教師が指導する思考過程を自ら声に出して顕在化し、生徒がそれを見て学習することを目指している。

 このような発話思考法を促進するために、次のような指針が挙げられている(オ・ドンネルら2007)。

 ・よく理解できない問題を解決するには援助が 必要であることを生徒に理解させる。

 ・発話をするため具体的なものを生徒に与える。

 ・課題遂行中に、自分が何を考えているかを他 の人に話すように生徒に伝える。

 ・発話思考法について多くを練習させる。

 ・生徒が行き詰まり、発話をしなくなれば、問 題を与えるか、質問をして発言を促す。

〜図書教材新報vol.122(平成27年6月発行)巻頭言より〜