vol.127

グローバル人材育成の難しさを考える
一般社団法人日本図書教材協会監事
比治山大学・比治山大学短期大学部学長
二宮 皓

 近年、政府も「グローバル人材育成」政策に注力しているところであるが、文科省の施策をみても、大学のみならず初等中等教育においてもグローバル人材育成政策が展開されている。大学については平成21年から開始された5か年事業のいわゆるグローバル30(G30)事業、そしてそれを継承する平成26年度開始のスーパーグローバル大学(SGU)事業がその典型であり、それを補強する形での「グローバル人材育成推進事業(Go Global Japan)」や「世界展開力強化事業」がある。また高等学校については平成26年度に開始されたスーパーグローバルハイスクール(SGH)(全国100数校)事業がそれである。いずれの事業でも申請する大学や高等学校は自ら「グローバル人材像」を描き、育成プログラム(カリキュラム開発や海外留学等)を提案し、その中で「優れた取り組み」として選定される、先端的なモデルであるといっても過言ではない。

 グローバル人材育成の難しさは、どのような人材像を誰がどのように描くべきか、また描かれた人材像の正統性はどうか、という点にある。グローバル人材に求められる資質・能力(コンピテンス)の定義は多様で、ものによっては相反することさえある。

 たとえば、第一の混乱は英語力である。英語ができなくてもコミュニケーションはとれるので、問題は中身である。特に日本のことも知らないで何がグローバル人材か、という不思議な意見である。確かに音楽家など表現の世界はそれ自体がコミュニケーションであるので言語によるそれは必要ないかもしれない。しかし一般には言葉によるコミュニケーションが中心となるので、私は英語によるコミュニケーションは必須であると考える。私は早くから小学校段階からの英語力の育成を急ぐべきであると主唱してきた。

 第二の例は思考力である。思考力は基本的能力として重要である。しかしグローバル化時代の新たな課題は、その能力が異文化との対話の中で活用されるかどうかにある。つまり訓練すべき思考力とはCross-cultural Thinkingである。主体的に考える力、問題解決能力などもそうであろう。こうした論議が必ずしも的確に行われてきたとは思えない。資質や能力の「辞書」あるいはリストを用意するだけでは人材育成は行えない。

〜図書教材新報vol.127(平成27年11月発行)巻頭言より〜