vol.132

キーコンピテンシーについて
一般社団法人日本図書教材協会理事
星槎大学特任教授
新井 郁男

 当理事会において、キーコンピテンシーというのはどのような意味かよくわからないということが話題となった。

 これはO E C D が実施しているP I SA (Programme for International Student Assessment) と呼ばれる学力調査において提起された言葉である。OECDではこれについて20ページに及ぶ解説文書(The Definition andSelection of Key Competencies) を出している。しかし、わが国では、平成20年1月に出された中教審答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善」において、「経済協力開発機構(OECD)は、1997年から2003年にかけて、多くの国々の認知科学や評価の専門家、教育関係者などの協力を得て、『知識基盤社会』の時代を担う子どもたちに必要な能力を、『主要能力(キーコンピテンシー)』として定義付け、国際的に比較する調査を開始している。」と指摘し、この概念の定義について簡単な注記をしているが、これだけでは十分に理解することはできない。詳しい説明をしても、元来、competency とかcompetence という言葉は多義的であり、アメリカでは、30年ぐらい前になるが、Teacher Competence という言葉をめぐって論議された経緯がある。そういうことがあるからかどうかわからないが、2003年のPISAの結果報告書Learning for Tomorrow's World: First Results from PISA 2003 においては、key competencies という言葉は使われておらず、代えてliteracy に詳しい解説が行われている。

 最近わが国では、アクティブラーニングなる言葉が政策的に使われるようになっており、教育界、特に、学校現場では混乱をきたしているように思われる。新奇な言葉によって新風を吹き込もうという意図はわからないわけではないが、政策提言においては慎重であってほしいものである。

〜図書教材新報vol.132(平成28年4月発行)巻頭言より〜