vol.135

紙とデジタルの併用
一般社団法人日本図書教材協会会長
菱村 幸彦

 教育の情報化が進展する中で、デジタル教科書の導入が課題となっている。この課題について、一時、「紙の教科書かデジタル教科書か」という二者択一の議論が盛んだったが、当面、二者併用の方向性が示された。

 今年6月、文部科学省の専門家会議がデジタル教科書に関する「中間まとめ」を公表した。それによると、2020年からデジタル教科書を導入するが、導入に当たっては、「紙の教科書を基本にしながら、デジタル教科書を併用することが適当である」としている。この場合、どこまでデジタル教科書を使用するかは、教育委員会の判断に委ねている。

 専門家会議が、デジタル教科書の切り換えに慎重なのは、現時点ではデジタル教科書の使用による効果や影響について確たるエビデンスがないからだ。

 デジタル教科書は、動画等を使って分かりやすい説明ができる、端末同士や電子黒板の間でデータの転送ができる、情報源にリンクして様々な知識が得られる、一人一人に応じた学習プログラムがつくれる、等のメリットがあることは間違いない。

 反面、デジタル機能に依存して書く作業や考える過程が疎かにならないか、動画は分かりやすいが集中力の妨げにならないか、手を動かして行う実験や観察が疎かにならないか、視力や脳の発達への悪影響がないか、等の懸念が拭えない。懸念に対する確たる答えはまだない。

 しかし、今後、デジタル教科書の効果や知見が蓄積される。学校のICT環境の整備も進む。社会全体の情報化の流れはさらに急になる。となると、中長期的には紙の教科書とデジタル教科書のいずれかを選択して使用することもあり得る。専門家会議はその余地を否定しない。

 併用とはいえ、デジタル教科書は導入される。その流れの中で、図書教材はどう変わるべきか。いま、その在り方が問われている。

〜図書教材新報vol.135(平成28年7月発行)巻頭言より〜