vol.140

世界の資質・能力(コンピテンシー)形成カリキュラム改革の動向(下)
一般社団法人日本図書教材協会監事
比治山大学学長
二宮 皓

 (6月号より続く)

 2 汎用的能力はどこで育成すべきか

 汎用的能力は、教科の学習活動の中で育成すべきか、教科の外の指導(たとえば総合的学習の時間など)において育成すべきか。オーストラリアでは教科等をまたがってすべての教育課程の中でそれぞれの汎用的能力の育成が位置付けられ、評価が構造的に行われる教育課程が準備されている。イギリスでは伝統的なトピック学習を残しながら、教科でこそそうした汎用的能力の育成が図られるべきであるという最近の主張が高まっている。21世紀のスキルと同様これからは教科の中で育成されるべきであるし、教科における教材もそれを意図するものとなる。

 3 グローバル化時代のカリキュラム(教科書・教材)・デザイン

 結論的には「熟慮し、議論し、納得する力の育成」教材を主張したい。グローバル化が進展し、価値観や立場の異なりが強調され、正解のない課題が溢れる21世紀の時代にあって、価値観や意見のコンフリクトが起こるべくして起こる場合に、意見の一致を強調するのではなく、意見の違いをそれぞれが適切に説明し、互いに納得できなくても、十分に意見を述べ合ったという、その過程そのものが、不一致であった言明・結論の正統性を担保すると考える。これこそが「熟慮と議論のプロセスを大切にした(Deliberation-basedな)学び」である。

 生徒が国をまたがって討議する場合、徹底して考え、熟慮し、議論し、意見を交換し、相互の違いを理解して、「納得する」ことでもって問題への接近を促すという学習が必要である。これこそがグローバル化時代のカリキュラム・デザインの重要な視座であると思う。世界に通用する人材の育成の一つの方向がこうした意見が異なる中での「納得」の方法論をどう学ばせるかであろう。

〜図書教材新報vol.140(平成28年12月発行)巻頭言より〜