vol.155

「教材多様化の時代」を前にして
一般社団法人日本図書教材協会副会長
川野辺 敏

  学習指導要領の改訂(平成32年度小学校)を前にして『授業と教材』の「見直し作業」を進めている。振り返れば、この冊子の初版は平成5年であり、教員養成機関では専門教科として取り扱われない「教材」に関する基礎的・専門的知識を浸透させることを目的とし、全国教育研究所連盟加盟機関の初任者研修用のテキストを念頭に置いて作成したものである。教材作成者や現場教師等の協力を得て、教材の種類・機能・活用等をまとめたことを思い起こす。

 それから25年余、社会状況は急変し、教育要求も多様化・細分化されてきている。教育目標も「知識・技能の習得」に加え、「思考力・判断力・表現力の育成」及び「学習意欲の向上」が求められ、学習方法も個別学習・グループ学習・校外学習などが要求される時代になった。当然、教材もそれらに対応するために、「多様化」を迫られている。

 このような大きな流れのなかで、教育機器(ICTやデジタル教材)が教育手段として大きく浮上しているのは周知の通りである。私など、いわゆる「アナログ人間」は、つい、新しい機器に翻弄されているチャップリンの「黄金狂時代」などを思い出し、人間が考え出した機械が、人間を支配する時代が来るのではないかと懸念してしまう。最近ロシアを訪問した仲間が「TRIZ」(日本語ではトリーズ=人間の諸機能を細分化・統合化して創造性を向上させる)の研究・実践が注目され、幼児の頃からテクノロジーを駆使した教育に人気があるという話も聞いた。

 あまりにも情報機器や工学的な思考に偏り、長年にわたり工夫・改善してきた紙媒体主体の教材がおろそかにされそうな潮流に飲み込まれず、これまで、積み上げてきた知見を根底に置いて、新教材との調和を図りながら、「人のぬくもり」が感じられるような教材研究・作成にあたるべき時ではなかろうか。

〜図書教材新報vol.155(平成30年3月発行)巻頭言より〜