vol.162

教科書の使用義務とは?
一般社団法人日本図書教材協会理事
星槎大学特任教授
新井 郁男

 主たる教材としての教科書は学校教育法において、「使用しなければならない」と義務づけられている。しかし、かねがね思案にあぐねていたのは、使用するとは具体的にどういうことなのか、ということである。

 さる5月22日に学校教育法が改正され、いわゆるデジタル教科書(改正法では「電磁的記録」と表現されている)を使用するかぎりにおいて教科書は使用しなくてもよいとされた。従来、教科書以外の教材は補充教材であったが、デジタル教科書は代替教材として位置づけられることになったわけである。しかし、教科書が主たる教材であることには変わりがない。具体的に、どのように使用すれば義務をはたしたことになるのかという疑問がはれたわけではない。

 従来、教育界では、「教科書を教える」のではなく「教科書で教える」でなくてはならないといわれている。しかし、「を」と「で」の違いはどこにあるのかは必ずしも明確とはいえない。法律上、小学校、中学校、高等学校では教科書を使用しなければならない、とされているが、使用するのは誰なのかについては明記されていない。教師は使わなくても児童生徒が主体的に使っていればよいのだろうか。ベテランの教師には「わたしは教科書は使わないで授業をしています。」と豪語するものもいる。学会などでは、教科書以外の教材、すなわち補充教材についての研究発表は多いが、教科書のどこを補充しているかについて明確に意識されているようには思われない。

 新学習指導要領では、知識の単なる修得というよりも、思考力とか判断力といった力を育てることに大きな比重が置かれている。主体的で深い学びといったことが重視されている。そういうなかで、教科書やその他の教材をどのように使うべきかについて、あらためて考えていかなくてはならないのではないだろうか。これについて法律に規定すべきだとは思わない。学校現場、学会などにおいて積極的な議論が行われることを期待する。

〜図書教材新報vol.162(平成30年10月発行)巻頭言より〜