vol.163

移行措置に対応した教材の提供
一般社団法人全国図書教材協議会相談役
佐野 金吾

 月に一回ほど中学校社会科の授業研究に参加している。今年は新学習指導要領への移行措置対応ということでテーマは「主体的・対話的で深い学び」が多い。授業者は「主体的・対話的で深い学び」を展開するために、課題の設定とその考察に相応しい資料や補助教材の準備に大変な時間と労力をかけている。

 生徒の手元の教科書や資料集などの教材は、社会的事象に関する知識の説明を重視したものであるため、社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする学習活動を展開するには適切な教材となっていない。

 「主体的・対話的で深い学び」を展開するために教科書や補助教材等には、生徒の興味・関心を生かし、自主的・自発的な学習を促すことのできる工夫を必要とする。単に社会的事象を教科書や資料集等で理解するだけの学習活動では「主体的・対話的で深い学び」とはならない。例えば、地理的分野では地域的特色を捉えるためには、当該の地域の自然環境や社会環境に関する資料とともに地域の形成過程が捉えられる資料が手元にあれば、生徒は課題意識を持って地域的特色を考察する学習活動に主体的に取り組むことができる。地理的見方・考え方を活用することができる資料集等の補助教材が準備できれば、教科書が現行学習指導要領によるものであっても「主体的・対話的で深い学び」を促す授業を展開することができる。こうした状況は他の教科でも同様であろう。新学習指導要領による教科書を活用するまでには、まだ、かなりの時間を必要とする。しかし、移行措置は平成30年度から新学習指導要領の規定によるものとしている。教材の開発等に関わる関係者は、このような状況を理解され、学校現場の活動を支援する教材を提供できるよう適切な対応をお願いしたい。

〜図書教材新報vol.163(平成30年11月発行)巻頭言より〜