vol.165

英国人教師の見た日本の学校
一般社団法人日本図書教材協会会長
菱村 幸彦

近刊の教育書の中で興味深く読んだ一冊を紹介したい。それはルーシー・クレハン著『日本の15歳はなぜ学力が高いのか?』(早川書房)という図書である。

著者は、ケンブリッジ大学で教育学修士号を取得した教育研究者である。ロンドンの中等学校で3年間教鞭をとった後、2か年かけて、PISA(国際学力調査)で高得点をあげた国々(日本、シンガポール、上海、フィンランド、カナダ)に滞在し、教育の実態を調べて、高得点の秘密を究明している。

比較教育の優れた実証的研究であるが、堅苦しい学術書ではない。現地で学校を訪問し、授業に参加し、教師や父母と話し合い、その間に出会ったエピソードを交えて、ユーモアのある文章で綴った旅行記となっている。ふだん見慣れた日本の学校が、外国人教師の目を通して見ると、違った風景となるのがおもしろい。

著者の目に映った日本教育の特徴については、本書を読んでいただきたいが、ほんの一、二を紹介すると、例えば、日本の小学校では「班」が組まれ、勉強も給食も掃除も班の仲間と一緒に行い、子どもたちは、集団で必要とされていることを学び、集団で達成した成果に誇りを持つことを学んでいると指摘した上で、これは日本の社会が何より集団の調和を大切にしているからだと分析している。

また、日本の教師について、緻密な授業計画の下に、まず必要な知識を教え、次いでステップごとにヒントを出し、子どもが自力で問題を解くように導いていると高く評価し、その卓越性の秘密は「授業研究」にあるとしている。授業研究によって授業計画が入念に作成され、評価され、調整され、共有財産として、だれもが利用できるようになっているというのだ。

日本以外の国々についても、鋭い観察力と洞察力で、各国の教育事情を活写しており、我が国の教育を考える上で参考になる。

〜図書教材新報vol.165(平成31年1月発行)巻頭言より〜