vol.167

新しい世代の到来を前にして
一般社団法人日本図書教材協会副会長
川野辺 敏

平成の時代が終わり、この30年間の出来事がそれぞれの立場から回想されている。私など高齢者にとっては、大変な変化の時代を予感させる時代であったとしか言いようがない。IT・パソコン・フェイスブック・ツイッター・スマホ・SNSなど、高齢者には縁遠い言葉と情報機器が、日常生活で一般的に活用されるようになった。パソコンやスマホを活用できなければ、売買や通信もままならず、便利に使っていた郵便ポストや小売店が消え、思い切って足を運んだスーパーでも、当然と思っていた現金決済もカード使用者に遠慮しなければならない状況に追いつめられている。

そして教育の現場では、いじめや不登校の数が増大し、家庭内ではDVの報道が盛んで、子どもの教育義務どころか、わが子を殺害するという事件が連日のテレビ画面をにぎわせている。子どもたちが憧れる将来の職種は「ITエンジニア・動画クリエーター・ユーチューバー」(NHK1月25日)であるという。

ちょうどそんな時、NHKのドラマで「みかづき」(全5回)が放送され、スホムリンスキー(ウクライナの教育学者・実践家)の著書が参考資料になっていることを出版元から知らされて、びっくりした。私は40年以上前に数冊ほど翻訳・出版したことがあるので、今の時代にドラマに仕立てた人が存在することに驚いたのである。

彼の実践を詳しく紹介する紙幅はないが、子どもの「個性重視と豊かな心」の育成に正面から取り組んだものであり、今日の教育の現場では、理解はできても具体化しにくい課題であるといえる。しかし、情報化・国際化の時代であるがゆえに、その土台となる「教育の原点」を改めて思い返してほしいと願ったのである。

〜図書教材新報vol.167(平成31年3月発行)巻頭言より〜