vol.172

批判的思考力のすすめ
一般社団法人全国図書教材協議会会長
細谷 美明

教員の働き方改革が話題になるなか、経済協力開発機構(OECD)が3年ぶりとなる国際教員指導環境調査(TALIS)の結果を発表した。文部科学省はこの結果について、わが国の教員の世界で最も過酷な勤務状況は認めつつも「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善やICT活用の取組等が十分ではないと分析している。

教員の働き方改革はさておき、文科省の分析の根拠となっているのが、TALISが指摘した「(授業中)批判的に考える必要がある課題を与える」中学校教員の割合が参加国平均の61・0%に対し日本の12・6%というデータである。これはPISAがこれまで指摘しているわが国の子供の論理的思考力の低さと連動していると考えてよい。

批判的思考力は、中学校3年生ごろから高校生のころに発達する能力で、その前段階で培われた論理的思考力の発展型と言える。その育成には論理的思考力を駆使した学習方法を授業の中に取り入れることが効果的である。たとえば、国語科や社会科、英語科などで行われるディベートをはじめ、社会科や理科で行われるシミュレーション学習などがある。今回のTALISの調査結果は、これら「主体的・対話的で深い学び」の授業実践が今の学校では必ずしも日常的に行われていないことを反映したものと言えよう。

現在、独自に作成した教材を使い職員を派遣して模擬体験的な授業を実施してくれる民間団体が増えてきている。社会科や家庭科の金融・消費者教育関係の全国銀行協会をはじめ、社会科の模擬裁判の授業に弁護士を派遣したり教材を提供したりしている東京弁護士会などがよい例である。長年にわたり教材作成に携わる本会としても積極的に「主体的・対話的で深い学び」の教材を作成し学校にアピールしていきたいものである。

〜図書教材新報vol.172(令和元年8月発行)巻頭言より〜