vol.177

紙と鉛筆による教育
一般社団法人日本図書教材協会会長
菱村 幸彦

周知のように、新年度から小学校の新学習指導要領が全面実施となり、それに対応した新しいデジタル教科書の使用が始まる。当面、紙の教科書と併用で、デジタル教科書の使用は教育課程の2分の1までとされているが、いずれこの制限は撤廃されるだろう。

文部科学省の補正予算や来年度予算案をみると、従来の情報教育予算のほかに、Society5.0やAI時代に向けて、ICT教育の予算が強化されている。例えば、GIGAスクールネットワーク構想(児童生徒一人一台のコンピュータと高速・大容量のネットワークの整備の推進2318億円)、新時代の学びを支える先端技術の導入(Society5.0時代に必要となる資質・能力の育成を図るためICTを基盤とする先端技術活用の実証的研究19億円)等である。

また、先ごろ公表された2018年のPISA(国際学力調査)では、読解力の成績が低下している。その原因の一つとしてコンピュータ使用型調査の不慣れが指摘され、我が国のICT教育の一層の推進が要請されている。

今後、教育のデジタル化はさらに進展することは間違いないが、紙と鉛筆による教育の重要性をないがしろにしてはならない。このことは、ICTを重視する理数系の専門家が指摘していることである。かつてデジタル教科書の是非をめぐって、理数系8学会が共同で「デジタル教科書に関する要望書」(平成22年)をまとめた。要望書は、デジタル教科書の導入が教育の質を高める上で必要としながらも、(1)手を動かして実験や観察を行う時間を縮減しないこと、(2)紙と筆記用具を使って考えながら作図や計算を進める活動を縮減しないこと、(3)自らの手と頭を働かせて授業内容を記録し整理する活動を縮減しないこと等を要請している。

特に小・中学校におけるノートの取り方の修得は、学びの基礎・基本である。それには紙と鉛筆によるアナログの活動が欠かせない。

〜図書教材新報vol.177(令和2年1月発行)巻頭言より〜