vol.179

「判断力」育成の再確認
一般社団法人日本図書教材協会副会長
川野辺 敏

令和2年の新春を迎え、オリンピック・パラリンピックの年であり、平和な心豊かな年を期待していたが、突然、新型伝染病コロナ・ウイルスの猛威が中国のみならず、日本でも大問題になっている。特に、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗員3700人を横浜の桟橋にくぎ付けし、「全員乗船」のままいつまで放置するのか、その対応に専門家だけでなく、私たち市民をも巻き込んで、行方を見守っている(その後開放)。そんなニュースを眺めながら、将来起こるであろうさまざまな日常的な課題を推測し、解決する習慣を早くから身に付けておくのが教育の重要な課題であることを、改めて考えさせられた。

ご承知の通り、学習指導要領では三つの力(思考力・判断力・表現力)の育成をめざしている。教材作成に従事する私たちは、それぞれの目標を念頭に置いて、仕事を進めておられることであろう。

同時に、今回の事件に直面してみると、改めて「判断力」の重要性を感じてしまう。青少年時代から、子ども自身に体験させ、判断させる力を身に付ける習慣が必要ということである。ある課題が発生したとき、どちらを選び、その理由を考え(思考力)、言葉を使って説明しなければならない(表現力)。その両者を育てる土台となるのが「判断力」であるともいえるからである。

これからの時代、社会全体が複雑になり、また、今日以上に限りなく「情報」が個々人の前に現出することになろう。それをどう判断し、処理しなければならないのか、そのような生活の基本になる資質を育てるのが、今後求められる学校教育の大きな役割といえよう。

教材作成者は、そのようなことは当然考え、教材作成に励んでいることであろうが、今回のような大きな事件に遭遇した機会に、改めて、まずは「判断力」の育成に力を注いでほしい。

〜図書教材新報vol.179(令和2年3月発行)巻頭言より〜