vol.183

ポスト・コロナと図書教材
一般社団法人日本図書教材協会会長
菱村 幸彦

新型コロナウイルス感染症の予防対策で、学校は長期の臨時休業を余儀なくされた。臨時休業で対面授業ができないとなると、代わりうるのは、ICT(情報通信技術)によるオンライン授業である。文部科学省は、臨時休業に関する通知で、繰り返し「ICT環境の積極的な活用」を促している。

しかし、我が国ではICTを活用したオンライン授業はごく一部でしか行われていない。文科省調査によると、今回の臨時休業で同時双方向型の遠隔授業を行った自治体は5%しかない。原因はICT環境整備の遅れにある。

ICT整備の遅れを打開するため、文科省は、児童生徒1人1台の端末の整備と高速大容量のネットワーク環境の整備を目指す「GIGAスクール構想」を策定し、令和元年の補正予算で2318億円を計上した。当初、令和5年までに目標を達成する計画で、令和元年は小学校5、6年生と中学校1年生を対象としたが、コロナ危機に直面して、急遽、計画を前倒しし、全小・中学生を対象に整備を図るべく、令和2年度の補正予算で2292億円を追加計上した。

今回のコロナ危機に際して、どこの自治体もオンライン授業の必要性と重要性を強く認識したから、小・中学校のICT環境整備は、一気に進むことは間違いない。

コロナ危機の終息後は、最先端のICT教育を取り入れた個別最適化の教育と創造性を育む教育が全国的に行われることになる。10年後に振り返るとき、プレ・コロナとポスト・コロナで教育が大きく変わったと知るのではないか。

教育のICT化が進めば、教材のデジタル化は不可避である。紙に印刷した教材の重要性はなお変わらないとしても、「図書教材」のコンセプトはデジタル教材を包摂して広がる。1人1台の端末がもたらす学校教育の変容を見据え、ポスト・コロナにふさわしい図書教材の在り方を究める必要がある。

〜図書教材新報vol.183(令和2年7月発行)巻頭言より〜