vol.184

新しい生活様式に潜むゲーム依存症の影
一般社団法人全国図書教材協議会会長
細谷 美明

令和2年も秋期に入り、学校では例年であれば運動会や文化祭など大きな学校行事の準備にかかる季節である。しかし、相変わらず新型コロナウイルスの脅威が続いている。この原稿を執筆している時点では、まだ政府による二度目の緊急事態宣言は出されていないが、第2波とも思える全国的な感染者の広がりは、あの長期にわたる学校一斉休校再来を想起させる。

同宣言発出の期間、大人も子供も家庭にいることが多くなり、テレビのほかパソコン、スマホといったICT機器を使う機会が否応なく増えた。再び学校が長期にわたる休校になった場合、懸念されるのがゲーム依存症である。

ゲーム依存症(ゲーム障害)とは、「ゲームをしたい欲求を抑えられない」「ゲームをすることを他の日常生活の活動よりも優先してしまう」「家族関係、仕事、学習などに重大な問題が生じてもゲームをやめられない」といった症状が12か月以上続く状態を指す。2017年の厚生労働省の調査によれば、インターネット依存症と考えられる中高生が5年前の調査よりもおよそ倍増の93万人存在し、この中にゲーム依存の者がかなりいるものと思われる。

ゲーム依存による弊害には、体力や骨密度の低下、睡眠障害、さらには感情のコントロールができない「キレる」状態やうつ状態などがある。不登校の原因の一つとも言われている。

わが国の学校におけるICT環境は、先進国の中では最低ランクである。しかし、家庭におけるモバイルインターネットの普及率は世界のトップクラスと言われている。家庭にいる時間が長ければゲーム依存症の子供が増えるのは必至だ。こうした不安を解消する可能性があるのが読書であり紙媒体の教材である。今度のコロナ禍の影響もありGIGAスクール構想など国による学校のICT化は促進されるだろうが、家庭学習教材を扱う我々は、一方でICT化の影に潜む魔物への対応にも配慮すべきだろう。

〜図書教材新報vol.184(令和2年8月発行)巻頭言より〜