vol.186

オンライン授業とカリキュラムの三層
一般社団法人日本図書教材協会理事
筑波大学人間系教授
清水 美憲

新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の出来事に翻弄された令和2年度も、早半期が過ぎ、新しい秋を迎えた。多くの大学では、新学期のスタートとともにキャンパスへの学生の入構に制限をかけ、授業はオンラインを中心に展開してきた。年度の途中から、一部の授業が対面で行われるようになってきた状況である。

オンライン授業は、同期型のオンライン会議ツールを用いてネットを介した対面で行う場合と、事前に作成した映像や音声付きスライドをサーバにアップロードしておき、学生がいつでも受講できるオンデマンド型が主流であった。実際には、学生のネット環境への配慮とアクセスの集中によるサーバのダウンの懸念から、オンデマンド型を推奨する大学が多かったようである。学習と教授が非同期型コミュニケーションとなるオンデマンドによる講義では、教師の教材と学習者による「自学」の質が鍵を握る。

国際比較調査のカリキュラム分析では、カリキュラムを「意図されたカリキュラム」、「実施されたカリキュラム」、「達成されたカリキュラム」の三層からとらえる枠組みが用いられる。オンライン授業をこの枠組みからみると、教師の側での「意図」(カリキュラムポリシーやシラバス)に基づく教材準備に対する「実施」(教授・学習活動)の距離が、対面授業に比べ遠くなるように思われる。非同期型コミュニケーションで展開するオンデマンドの授業では、この距離が一層遠くなり、学習者の「自学」で教材の果たす役割が大きくなる。授業のオンライン化は、「意図」、「実施」、「達成」の関係からみた図書教材の機能についても再点検を求めているように思われる。

〜図書教材新報vol.186(令和2年10月発行)巻頭言より〜