vol.93

授業で教材を活かすには
社団法人日本図書教材協会顧問
筑波大学名誉教授
辰野 千壽

 どんなによい教材を用意しても、それを活かすかどうかは、それを用いる教師と子どもにかかっている。特に教師の@知識、A性格・態度、B授業力、C教室管理力などにかかっていることは、これまでの研究で明らかである。ここでは、特に教師の教室管理力について述べる。これは、教室の子どもの学習活動が円滑に行われるように、教室の秩序維持や注意散漫の処理をうまく行う能力である。

 効果的な教室管理の鍵となる指針として、ローゼンシャインら(1986)は、次のものをあげている。@教室のよい準備、A学年初めに規則や手続きの取り決め、B子どもとの相互作用における教師の指導力、C授業を進めるときの滑らかさと勢い(はずみ)、D課題の種類と適切な水準、Eシートワークについて一貫した手続きと追跡調査、Fいつ、いかにして、子どもが援助を得ることができるか、彼らが課題を完了したとき何をしてよいかを明確にしておくこと。

 教師の管理では、子どもの行動の統制(体の動き、社会的行動の統制)、学習課題の統制(課題の選択とその遂行に対する統制)、思考過程の統制(多様な認知レベルの教材を用い、多様なアイディアの追求を許し、あるいは励ます程度)が研究され、次の結果が示されている。

 子どもの行動の統制は、成績と積極的に関係することを示し、学習課題に対する強い統制は、成績と積極的相関を示した(教師の統制と成績との間に逆U字型関係を示す結果もみられた)。子どもの思考に及ぼす教師の統制との相関は、社会経済的地位と学年で変化し、社会経済的地位の低い子ども、低学年の子どもは、統制の程度が大きいほど成績がよくなった。なお、学習課題と思考の両方に効果的な自由の程度は、学習課題のレベル(複雑さ)にかかっており、複雑な課題には、自由の程度がやや大きいほうが効果があった。

〜図書教材新報vol.93(平成25年1月発行)巻頭言より〜