vol.96

教具の教材化
一般社団法人日本図書教材協会理事
星槎大学大学院教授・上越教育大学名誉教授
新井郁男

 昨今、教育実践の場に多様な教具が導入されつつある。伝統的には、学校における主たる教具は黒板とチョークであったが、それに加えて、OHP、OHC、電子黒板、パソコンなどが登場してきた。また、計算用具としては、そろばんに加えて、というよりそれに代わって電子計算機が使われるようになっている。最近は、紙媒体の現行教科書をソフトとして挿入したパソコンを学習者用デジタル教科書として全ての児童生徒に持たせる施策、実践が始まっている。これは一定の教育内容を子どもに教え、学ばせるための教材、すなわちソフトを内部化した教具の導入といえるであろう。

 こうした動きについては、これまで当新報で、「教科書のデジタル化―求められる実証的研究」(2012・4・25、Vol.84)、「教科書のデジタル化について思う」(2012・9・25、Vol.89)と題して、若干の問題提起を行ったのであるが、加えて提言したいことがある。それは教具の教材化の重要性である。

 一般に論議されているのは、パソコンに挿入されたソフトの良し悪しとその活用の仕方であるが、パソコンや電子黒板などの教具、すなわちハードウェア自体を教材にするということについてはほとんど視野に入っていないように思われる。しかし、ソフトウェアが同じであっても、それを挿入したハードウェアが異なれば、子どもたちが受けとる内容も異なるであろう。マクルーハン(1911〜1980)がいみじくも言ったように、メディアはメッセージ、さらにはソフトを受け取る者を刺激するマッサージである。ソフトウェアが同じであっても、ハードウェアが異なれば、メッセージやマッサージがどう異なるかを教師自身だけでなく、子どもたちにも考えさせることも重要ではないだろうか。

 ハードウェア、すなわち教具の教材化の重要性を提言したい。

〜図書教材新報vol.96(平成25年4月発行)巻頭言より〜