2025年3月24日
文部科学省初等中等教育局
教科書課長 黄地 吉隆 様
一般社団法人日本図書教材協会
会 長 辻󠄀村 哲夫
一般社団法人全国図書教材協議会
会 長 細谷 美明
中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会デジタル教科書推進ワーキンググループ中間まとめに関する意見書
デジタル教科書推進ワーキンググループ『中間まとめ』におきまして、教科書の形態として紙だけでなくデジタルも認められることを制度上明確化されたことに賛同の意を表明いたします。
また、児童生徒の学びの充実を最重要目的として、紙とデジタルのよさを取り入れた学習環境の重要性を示されたことも適切なご指摘だと思います。学校用教材(全国の小中学校で使用されるテスト、ドリル、ワーク、資料集などの図書教材・デジタル教材)を発行・供給する立場として、この趣旨に則り、これからも有益適切な教材の開発・供給・アフターフォローに努めてまいる所存です。
加えて、弊協会としては、「子どもたちの豊かな学びと先生の適切な指導のために」を基本的な考え方として、『中間まとめ』に示された方針を踏まえて、次のような取り組みを進めていくこととしておりますことを申し添えます。
・デジタル学習基盤における、学習指導要領、教科書、教材の適切かつ公正な技術面・運用面での連携に向けた研究
・教科書利用に関して、教科書団体と弊協会との関係に基づいた、教科書と教材のデジタル間連携に対応したルールの構築研究
・学校用教材の活用によって得られる学習データについて、学校現場および児童生徒にとって有益適切なデータ利活用の在り方の研究
・学校現場における教材活用実態(紙・デジタル)の調査
以下、『中間まとめ』について弊協会の意見をより具体的に申し上げます。
記
1.教科書の形態におけるデジタルの制度上の位置付けの明確化を踏まえた、教科書と教材の明確な区分け
現在、教科書発行者が制作する教科書に係る内容は、「紙の教科書」(検定対象)、「デジタル教科書」「デジタル教材(QRコード先のコンテンツ等)」(検定対象外)で構成されていますが、『中間まとめ』において教科書の形態としてデジタルを制度上明確化(検定対象)したことで、教科書の位置付けがシンプルとなり、教育現場にとっても分かりやすくなることと思います。
このことを評価しつつ、今後の審議において、教科書と教材がさらに明確に区分けされることを希望いたします。
具体的には、教科書=検定対象=教科書発行者による制作、教材=検定対象外=様々な発行者による制作という区分が明示されることを望みます。これにより、様々な制作主体によるデジタル教材が公平に選択・利用できる環境が整備されると考えます。
さらに、このような区分により、教材内容の向上を目指した競争が促進され、質の高い教材の開発と供給が期待されます。また、文科省・教科書発行者・教材会社それぞれが携わる範囲が明確になるので、教科書制度の維持のためにも望ましいと思われます。
2.QRコードなどを介して紙媒体の教科書と接続して使用されるコンテンツの取り扱い
『中間まとめ』におきまして、「学習指導要領における指導事項が系統的・組織的に記載される教科書の一部として認められるデジタルコンテンツは、教科用図書としての位置付けが与えられる。」とお示しいただきましたことは適切なご指摘だと思います。
教科書と教材の明確な区分けを進めるためにも、原則として、QRコード先のコンテンツは教科書に限定した内容とすることを前提に、今後の審議を整理していただくことを希望します。
3.デジタル教科書と教材の連携
(1)デジタル教科書と教材の技術的な連携の研究
デジタル学習基盤における豊かな学びや適切な指導において、デジタル教科書と教材の一層の連携が必要だと思われます。今後、教科書ビューアや簡便な接続(リンク)、コード(学習指導要領コード等)による連携のみならず、AI技術の活用、その他様々な連携の方法を研究することが望まれます。
(2)公的なプラットフォームの運用
デジタル教科書と教材が適切に連携するためにも、プラットフォーム(学習eポータル等)による運用や、教科書ビューアの規格の標準化が望まれます。様々な制作主体による多種多様なデジタル教材が供給され、その質の高さで競争していくためにも、コスト面、運用面など様々な課題が想定されますが、公共性の高いプラットフォームが望まれます。
(3)教科書と教材の連携における効果的な活用についての実証の必要性
デジタル教科書と教材の連携を考えていくにあたり、学校における効果的な活用について調査・実証することが望まれます。
そのためにも、児童生徒の学びの充実を最重要目的として、紙とデジタルのよさを取り入れた学習環境を考えていく視点から、デジタルとともに、紙の教科書、または紙の教材との組み合せも含めて実証を進めていくことが必要であると考えます。
具体的な使用の課題例として、一つの端末内でデジタル教科書と教材を同時に使用する際の画面サイズにおける視覚への影響や操作性などは、学習効率と合わせて今後も実証が求められるところです。
実証を進めていくにあたっては、弊協会もその検討段階から、これまで培ってきた加盟出版社の教材開発の知見を活かして協力させていただけますようお願い申し上げます。
上記の(1)~(3)いずれにおいても、貴省のもとで、教科書発行者と教材会社の双方が加わって連携して研究に取り組むことで、研究がより円滑に進展していくものと思われます。
4.学校による主体的な教材選択
『中間まとめ』におきまして、学校用教材について「主たる教材を補完するものとして作成されるドリル、ワーク、資料集、動画などは、教科書の内容をより深めたり、広げたり、学習を支援したりする副教材として、必要に応じて学校の判断により用いられるものである。」とお示しいただきましたことは適切なご指摘だと思います。
学校用教材は、子どもたちの豊かな学びや先生の適切な指導のためにも、また法令に照らしても、紙、デジタルを問わず、学校が主体的に判断して選択することが重要です。
今後、教科書と教材の連携が増えてくることから、教科書と教材の制度・選択・供給が異なることを示すためにも、『学校における補助教材の適切な取扱いについて』(平成27年3月4日付け26文科初第1257号文部科学省初等中等教育局長通知)と同様に、デジタル教材の法的な位置付けや取り扱いについても加えていただいた上で、学校において有益適切な教材を使用することや、教材が不適切に使用されないように管理を行うことなどを徹底する通知を発出していただきますようお願い申し上げます。
5.教科書準拠教材作成への配慮
質の高い教科書準拠教材づくりには、学習指導要領とともに、教科書を十分に分析研究する時間が必要です。良質な教科書準拠教材を供給していくためにも、またデジタル教科書と適切に連携したデジタル教材を作成していくためにも、教材会社にはできる限り早い時期に教科書見本(紙・デジタル)が提供されることを望みます。またその際には、教科書発行者と教材会社の双方にとって過重な負担とならないようなスケジュール設定というご配慮もお願い申し上げます。
以上、中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会デジタル教科書推進ワーキンググループ『中間まとめ』に関する意見として申し上げます。
今後の審議の参考としていただければ、幸いです。
弊協会は、設立以来、すべての子どもたちに基礎学力が定着することを願いながら、教材会社・教材販売店ともに、学校に対して、良質な教材づくり、公平採択の環境づくり、迅速・正確・適切な供給、現場のアフターフォロー、情報提供や教材活用の提案などの活動を通して、学校教育の向上に資するべく努力してまいりました。
この役割は、デジタル教科書や教材が普及していくこれからも欠かせないものと考えております。
弊協会はこれらの役割を果たせる唯一の教材業界の専門団体として、有益適切な教材の研究開発を促進し、学校教育の充実向上のために今後一層貢献していく所存です。