一般社団法人日本図書教材協会理事
筑波大学人間系教授
清水 美憲
身の回りではキャッシュレスでの買い物や様々な団体への会員登録など、そして大学では学生向けアンケートや学術研究のための調査など、「QRコード」(2次元コード)の利用が浸透している。QR(クイック・レスポンス)の名の通り、この2次元コードにスマホやタブレットをかざすだけで、瞬時に情報ソースにジャンプし、手軽に情報の閲覧・入手やデータ入力ができる。その間、端末側やサイト側で行われる情報処理のプロセスはブラックボックス化されていて、意識することもない。
先日、2024年度からの小学校教科書の検定結果が公表され、検定に合格した全教科の全ての教科書に、2次元コードが掲載されているとのことであった。いうまでもなく、GIGAスクール構想の下でパソコンやタブレットなどの情報端末の配布が進み、学習者用デジタル教科書に関する法令やその使用のためのガイドライン等が整備されてきたからである。今後、デジタル教科書の本格導入で先行する教科のみならず、紙とデジタルのそれぞれの強みを活かす学習指導が全ての教科で一層進むとみられる。音声や動画など、紙媒体のみでは不可能であったコンテンツで学ぶことが可能になるし、児童生徒の特性に合わせた学びが可能になる。
このように、個別最適な学び・協働的な学びの観点や多様な児童生徒の円滑な利用の観点から、教科書や教材等におけるデジタルコンテンツの活用が期待される一方で、ジャンプする「先」も気になるところである。日常生活において当たり前になってきたデジタル化の進展に対し、教科書・教材等も広がる学びの扉を提供する役割を果たすことが求められている。そこでは、紙やデジタルを媒介に提供される「意図されたカリキュラム」に基づく教材の精査に加え、それを「実施されたカリキュラム」から「達成さ
れたカリキュラム」へと具体化していく教師の力量に一層焦点が当たっていくものと思われる。
~図書教材新報vol.216(令和5年4月発行)巻頭言より~