一般社団法人全国図書教材協議会会長
細谷 美明
新年度が始まり、昨年度から本格化している教材のデジタル化への対応に追われているところも多いだろう。
2月7日、末松文部科学大臣は中央教育審議会(以下、中教審)に対し、第4期教育振興基本計画の策定を諮問した。本計画では予測困難な未来社会の到来に対し「超スマート社会(Society 5.0)」への対応と「ウェルビーイング」の実現を掲げ、4つの諮問事項を提示している。その中で注目されるのは、オンライン教育の活用について「デジタル」と「リアル」の最適な組み合わせについて検討を求めている点である。
昨年の中教審答申「令和の日本型学校教育」ではデジタルがもたらす学びの可能性が示された。しかし、その後のコロナ禍により子どもたちが学校に通えないという事態が発生したことが、教師と子ども、子ども同士がともに関わり合いながら学び成長したり、様々な体験活動を展開したりするなどリアルの場の提供を行う学校や教師の存在価値を逆に再評価させることになった。この1年の社会状況の変化が国の教育施策の方向性にも影響を与え、今回の諮問文の「デジタルとリアルの最適な組み合わせ」という表現になって現れたものと考えることができる。
この諮問でより明確になったことがある。それは、教材がデジタルのためのものではなく子どもの学習支援、教師の授業支援のためのものであるという教材本来の目的・意義を、デジタル教材を作成・販売する人間に対し思い起こさせてくれたことである。
授業の基礎・基本ができている教師は学習目標や目の前にいる子どもの実態にあった教材を準備する。最近の急速な教材のデジタル化にも彼らは適切に対応していることは会員の皆さんが十分承知していることであろう。良き授業は良き教師のもと適切な教材を活用しながら行われていることを我々は再認識すべきである。
~図書教材新報vol.205(令和4年5月発行)巻頭言より~