一般社団法人日本図書教材協会会長
辻村 哲夫
四月から、全ての小学校五・六年生と中学生に英語はじめ三教科のデジタル教科書が無償配付され、実際の授業で使用しての課題の洗い出しが行われる。
また併行して、二月には中教審・特別部会が設置され、デジタル教科書・教材と既存の教科書・教材との関係の整理などを行って、それぞれの在り方に関する検討が始まっている。
デジタル教科書・教材の在り方について本格的な検討が始まったと言えよう。ここで重要なことは、文科省も公表しているように、検討の観点は、どのような在り方が「学びの充実に資するか」ということである。
教科書については、無償制度や検定制度等の教育問題とともに財政問題も重要なテーマとなろうが、飽くまで、いかなる在り方が「学びの充実に資するか」の観点での検討を期待したい。
教材については、教科書のような制度の問題、財政問題などはないものの、教材の採択が学校の自由な判断で決定される中、「紙」「デジタル」、それぞれの特性を生かした、より緻密な教材を作成していくという、難しい課題に対応していかなければならない。
「紙」「デジタル」を併用したある小学校からは次のような実践報告が出されている。 ―記録を残して練習の繰り返し、つまずきの確認などが必要な場合は「紙」。図を動かしたり文字の大きさや画面の色を変えたりして見やすくする場合は「デジタル」・・・。
ポイントは、「紙」か「デジタル」か、あらかじめ決めて使用するのではなく、学習成果によって選択的に使用しているということである。
今後、教科の特性や単元・学習テーマ等の場面に応じて教材を選択的に使用するケースが増えていくであろう。学校のニーズを踏まえてきめ細かく工夫して作成された教材は、これまで以上に「学びの充実」に寄与し、学校教育でより大きな役割を果たしていくことであろう。
~図書教材新報vol.204(令和4年4月発行)巻頭言より~