一般社団法人日本図書教材協会前会長
国立教育政策研究所名誉所員
菱村 幸彦
昨年末、日本図書教材協会は、「ICT活用に対応した学校用デジタル教材ビジョン」と題して、「良質な図書教材の実績とノウハウをもとに、学校現場におけるICT活用に対応した有益適切なデジタル教材を開発・発行し、紙とデジタル双方の特長を活かすことで(中略)先生方の指導と子どもたちの学習を支え(る)」旨のプレスリリースを出した。
今回のアピールは、主として政府の関係機関に向けたものと聞くが、広く一般にも知ってほしいことだ。というのは、図書教材出版社は、デジタル分野でも大きな役割を果たしているにもかかわらず、「図書教材」が意味する「紙の教材」というイメージに引きずられて、ともするとデジタル教材とは縁が薄いと見られがちだからである。
デジタル教科書は、検定教科書と同一の内容をデジタル化したものだが、動画等の補助教材と一体的に作成されているので、教科書会社はデジタル補助教材の開発にも力を入れている。
加えて、経済産業省が所管するEdTech(Education とTechnology の合成語)企業の参入がある。GIGAスクール構想の整備に伴い、学校教育の分野に多くのEdTech 企業が参入し、デジタル教材の販路を広げつつある。
図書教材出版社は、いわば教科書会社とEdTech 企業の挟撃を受けているわけで、もっと積極的にデジタル教材開発の実績をアピールする必要がある。図書教材出版社は、長年にわたって学習指導要領や教科書をはじめ、学力・学習・評価等について様々な観点から授業実践に根ざした研究を積み重ね、良質で有効なデジタル教材の開発に成果をあげている。その優れたデジタル・コンテンツは、児童生徒の確かな学力を育成する上で不可欠なものとなっている。
図書教材出版社は、Society 5.0 時代の到来に対応して、デジタル教材の開発力をさらに高めるとともに、その実績を広く世間に知ってもらう努力が必要である。
~図書教材新報vol.201(令和4年1月発行)巻頭言より~