vol.236 エストニアのデジタル教科書研究こぼれ話

一般社団法人日本図書教材協会副会長
広島大学名誉教授
二宮 皓

 本年3月に「エストニアのデジタル教科書」現地調査を行い、その成果は(公財)教科書研究センター『センター通信No.132(臨時増刊号)』で報告した。本稿では「こぼれ話」として、Star Cloud社が開発・提供するデジタル教科書のポータルサイトOpiq(全国500校以上で採用)のログデータの分析に基づく「デジタル教科書・教材の使用の態様・実相」の一部を紹介する(Y.Opanasenko,et.al., Report on the results of DigiEfekt study:Opiq interaction,2024)。
 本研究は2021・22年度のOpiqの生徒の「使用ログデータ」の収集・分析(「シーケンス分析(配列解析)と「プロセス・マイニング」)により、生徒の利用の態様クラスターと効果的な使用の在り様を探るもので、アクセス時間、教科別、教科書のタイトル別、教科書の「章(単元)」別、主題別、練習問題別などの解析が行われている。なお、この方法は教育ではきわめて最近年のものであるという。
 「使用の態様」について、1日平均アクセス時間は、3年生で226分(3.7時間)、9年生で427分(7.1時間)と推計されている。またOpiq使用については、「読む」(章を読んだり、音声読み上げを使用したりする)、「メディア活用」(ビデオ、オーディオ、ギャラリー)、「練習」(テストの練習や記録保存)、及び「フォーマルテスト」(教師が提供する章の外のテスト問題)の4つのタイプ(クラスター)に大別されることがわかったという。
 詳細の紹介はまた別の機会にするが、デジタル教科書の効果的使用の在り方を探るための使用(usage)ログデータの分析のひとつのモデルとして注目したい。

~図書教材新報vol.236(令和6年12月発行)巻頭言より~

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