vol.215 分野等横断の重要性

一般社団法人日本図書教材協会副会長
星槎大学特任教授
新井 郁男

現行の小・中学校の学習指導要領では、教育の基本と教育課程の役割の重要な視点の一つとして、次のような点が提起されている。

「各学校においては、児童・生徒や学校、地域の実態を適切に把握し、教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと、教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと、教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことなどを通して、教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動…(以下「カリキュラム・マネジメント」という。)に努めるものとする。」

ここに提起さている視点はいずれも各学校にとって重要なマネジメントの視点であろう。なかでも教科等横断的な視点に注目しているが、これに関連して重視しているのは、教科内横断である。教科等横断は他教科等との横断であるが、教科内の横断である。

例えば、社会科では内容が地理的分野、歴史的分野、公民的分野という三つの分野から構成されているが、分野間の横断が重要だと思うのである。本図書教材新報Vol.191、206で、平成18年の教育基本法改正で宗教教育に関して追加され「宗教に関する一般的な教養」について考察したが、これはまさに地理的分野と歴史的分野の横断的考察である。そこでも指摘したように、これは近年注目されている地政学的な視点である。

国家単位でNATOなどさまざまな同盟が組織されているが、これも地政学的な視点で理解することが重要である。ロシアとウクライナの問題の背景も政治と地理とを関連させて考えることが重要であろう。

実は、かつてヒトラーが地政学を援用したという経緯もあり、第二次大戦後、GHQは我が国での地政学的研究を禁止していたが、最近、地政学にかかわる著作が数多く刊行されている。

こうした諸研究をふまえ、分野等横断の教材の開発を進めることが重要であろう。

~図書教材新報vol.215(令和5年3月発行)巻頭言より~

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