一般社団法人日本図書教材協会前会長
菱村 幸彦
GIGAスクール構想によって1人1台端末が整備され、学校のDX(デジタル化)が急速に進展しているが、児童生徒のデジタル情報の利用については慎重な配慮が必要である。
まず、個人情報の保護である。児童生徒に関するデータには、児童生徒の氏名とこれにひも付く多様なデータがある。例えば、▽学年・学級、▽住所・電話番号、▽生年月日、▽身長・体重・健康状況、▽テストの結果・指導要録の評価、▽出欠席の状況、▽生徒指導・進路指導情報、▽端末の操作履歴―等々、児童生徒のデータは数多い。これらはすべて個人情報である。
法改正で令和5年度から公立学校には、個人情報保護条例でなく、個人情報保護法が適用されることとなった。したがって、児童生徒の個人情報を利用する場合、個人情報保護法の規定に基づく適正な手続きが必要となる。例えば、利用目的をあらかじめ特定する、特定した利用目的を本人に明示する、データの安全管理措置を講じるなど個人情報保護法等に基づく適正な取り扱いが求められる。
次に、プライバシー権の侵害とならない配慮である。プライバシー権は、法律の定めはないが、判例で「みだりに公開されないという法律上の保護に値する利益」(最高裁昭和56年4月14日判決)として確立している。
具体的には、①私生活上の事実または事実らしく受け取られるもの、②一般的な感受性を基準にして公開して欲しくないもの、③一般の人々にまだ知られていないもの―を、本人の了解なしに公開することはプライバシー権の侵害となる。プライバシーの保護が十分でない場合、国家賠償法に基づく賠償責任のリスクが生ずる。
学校が教育データを取り扱う場合、教育委員会の指導の下に、教育情報セキュリティポリシーを確立し、学校における情報セキュリティの責任体制を明確にしておく必要がある。
~図書教材新報vol.219(令和5年7月発行)巻頭言より~