vol.224 気候変動に対する教育的な営み

一般社団法人日本図書教材協会理事
筑波大学人間系教授
清水 美憲

 令和5年11月の気候は、例年と比べ特異なもので、連日ニュースで大きく取り上げられた。特に、5日には熊本で観測史上初めて30度を超える気温を記録し、大阪でも観測史上の最高気温を記録。7日には都心でも27・5度を記録し11月の最高気温を100年ぶりに更新したとのことであった。最近では、「地球沸騰化」という言葉すら耳にする。

 近年、世界各地で報告されている気候変動による環境変化は、人類の将来を左右する喫緊のグローバル課題であり、SDGsの第13の目標に「気候変動に具体的な対策を」が掲げられているのは周知の通りである。OECDは、このような気候変動に対する教育の営みを推進するために、ユネスコや「教育インターナショナル」(EI)と連携し、「Teaching for Climate Action」(気候変動対策の教育)というプロジェクトを展開してきた。このプロジェクトは、数学授業の国際比較のビデオ研究とともに、OECDの「グローバル・ティーチング・インサイト」(GTI)の柱である。

 OECDのウェブサイトでは、教師が集うプラットフォームが公開され、世界各地の教師の取り組みの好事例にアクセスできるようになっている。また、世界から850名を超える教師の参加の下、次代の社会を支える子どもたちに対する教育の在り方についての討議結果の報告書も公開されている。例えば、学校内でも周りにあるもののリサイクルやアップサイクルを中心とした子どもの活動を展開するシンガポールの事例や、「川」をテーマに学習者主体の活動を仕組んで彼らの問題意識を高める日本の事例などがあり、学校での教科間や教師間の協働、学校を包み込むコミュニティとの連携、科学者の専門知の扱いなど、ポイントとなる論点が示されている。これらのビデオは、現在はすべてYouTubeで見られるようになっている。

 先日、大学院生を対象に前述のウェブサイトやレポート、YouTubeのリソースを用いて、気候変動に対する教育的な営みの事例を検討し、実際の課題について議論した。このようなウェブベースの教材は、学習者の探究活動を活発にして、気候変動のような大きなテーマに切り込む威力を発揮する。

~図書教材新報vol.224(令和5年12月発行)巻頭言より~

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