一般社団法人日本図書教材協会理事
第37期学校教材調査会数学科専門委員
筑波大学人間系教授
清水 美憲
改訂学習指導要領の全面実施の下、GIGAスクール構想によって学校現場に一人一台の端末や高速通信ネットワークが整備され、学校教育におけるICT活用や教材のデジタル化が進行している。このような状況下で、現場に浸透している紙媒体の図書教材の有効性が改めて評価される一方で、紙とデジタルの双方の強みを生かした特色ある図書教材も開発されている。
昨年度、第37期学校教材調査会専門委員として、中学校数学科の図書教材の調査に携わる機会を得た。数学科では、学習者が数学的な見方・考え方を働かせ、日常生活の場面や数学の問題場面での数学的活動を通して、基礎的な概念や原理・法則等を理解するとともに知識・技能を活用する力を身につけること、数学的に表現する力を身につけること、学ぶことの意義や有用性を実感すること等が目指されており、この観点からみて教材がいかに工夫されているかの点検が重要である。
具体的な分析は、図書教材を手にする学習者の姿を思い描きながら、問題が適切に配置され妥当か、問題の分量や内容の配分は適当か、当該学年に相応しい内容が扱われているか、そして編集に創意工夫がみられるか等の観点から行った。また、インターネットの利用等、ICTの活用の面での教材と評価手法の工夫も分析した。結果として、例えば、強化された統計分野の「データの活用」領域での「箱ひげ図」の利用等、各社は独自の編集の立場から良問を含む多様な教材を提供しており、教材には特色がよく現れていることが確認された。
図書教材は、学習指導要領や教科書の内容の検討、今日的な学力論や学習論、そして評価研究などを基盤として編集され、全国の学校に供給される。そして、教育の機会均等確保のための重要な役目を果たすとともに、児童生徒の学力の保障に貢献する。学校教材調査会への参画は、具体的な教材の分析を通してこのような図書教材の位置とその重要性を改めて認識する機会となった。
~図書教材新報vol.233(令和6年9月発行)巻頭言より~