第37期学校教材調査会理科専門委員
東京学芸大学先端教育人材育成推進機構教授
宮内 卓也
中学校に勤務していた頃、定期考査の問題づくりは重要な仕事のひとつであった。生徒の学習の成果を見取ることは、同時に自分の指導の成果と課題を認識することにもつながるからである。
観点別評価の導入などを契機に、学校現場では多様な評価方法が知られるようになった。定期考査のようなペーパーテストは評価方法のひとつとして古くから実践されているが、依然として大きな位置を占めている。
ペーパーテストは、ともすれば事実的な知識の評価に偏りがちになるという指摘もよく耳にするところであるが、問題作成を工夫することで、児童・生徒の学習成果を広く捉えることができるのではないか。
問題づくりについて、評価という視点からは、授業のねらいとの関連がはかられていること、児童・生徒の力を見取ることができる問題であること、児童・生徒の解答を具体的に想定できることなど、また、構成という視点からは、小問の構成が適切であること、解答するために必要な要素が示されていること、児童・生徒が理解できる問題文であることなど、大切なことは多々挙げられる。編集会議などで問題検討の場面に遭遇すると、参加した先生方の議論は尽きず、問題づくりの奥深さを改めて実感する場となっている。その一方で、教員が問題づくりについて深く学んだり協議したりする場は意外に少ないのではないか。
学校用教材は各社の創意工夫のもと、児童・生徒のために提供されているが、そこに凝縮されているさまざまな要素は、若い教員の問題づくりに少なからず影響を与えているのはまちがいない。コピペは慎まなければならないが、良問との出会いは問題づくりの資質・能力を磨く契機となる。
今後も児童・生徒のために、そして若い先生方のためにも、学校用教材がますます充実することを期待したい。
~図書教材新報vol.234(令和6年10月発行)巻頭言より~