vol.235 TeachingからLearningへ

第37期学校教材調査会英語科専門委員
東京家政大学人文学部教授
太田 洋

 教育現場では、どのように教えるか、つまり「指導法」についての議論が盛んです。最近、私がある先生から聞いた言葉が心に残りました。「言語活動ばかり注目するのは、もう終わりにしませんか」と。これまでの授業は、教師が主語となり、どう教えるかに焦点が当てられていました。
 しかし、本当に大切なのは、その教え方によって児童・生徒がどのように学びを受け取るか、そしてそれをどう活かしていくかではないでしょうか。教師がどう伝えたかだけでなく、児童・生徒がどう受け取ったか、学ぼうとしたか、さらには、その後児童・生徒はどうなっていくのかを見取ることが重要です。つまり教える側だけでなく、学ぶ側を主語にした視点、TeachingからLearningに焦点を当てることが必要です。
 そのためには、児童・生徒に学びを委ねる場面を作ることが大切です。ある先生が実践した授業の話です。たまたま10分間が余り、その先生は生徒たちに学習者用デジタル教科書を使わせて自由に聞き取りをさせたそうです。そのときに生徒たちが今までにない聞き方をしていたそうです。線を引いた後にマッピングをする、英単語を書く、自分に近づける学びをするなど、教師が想定していなかった学び方を見ることができたのです。学びの様子を見取ることの意義を改めて感じたそうです。
 教材作りに「Learning」の視点はどう活かせるでしょうか。以下の工夫を考えました。まず、活動を通して児童・生徒がどのような学び方をするかを予想し、別冊に学び方と支援の仕方の例を示すことで、先生が多様なアプローチで支援できるようにします。また、既習事項を使って行う活動とその評価の観点を示し、学びを中期的に見取る方法を提示することが考えられます。
 TeachingからLearningへ、この視点を取り入れ、授業と教材に新たな可能性を見出していきましょう。今こそ、見直すよい機会です。

~図書教材新報vol.235(令和6年11月発行)巻頭言より~

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