vol.240学び方がわからない子どもたち

第36期学校教材調査会英語科専門委員
信州大学学術研究院教授
酒井 英樹

 学び方がわからない子どもたちは少なくない。私が専門とする外国語教育に関して、「高3生の英語学習に関する調査〈2015―2021継続調査〉」(ベネッセ教育総合研究所、2022)によれば、高校3年生の61%が「英語を使う力を高める学習方法がわからない」と回答している。英語を話したり書いたりする活動をよくしていた群と、あまりしていなかった群に分けると、「英語を使って仕事をしたい」や「教室の外で英語を使ってみたい」という意欲面を問う質問では前者の群の方が高い値を示したのに対して、「英語を使う力を高める学習方法がわからない」という質問に関しては両群に違いはなかった。すなわち、英語の授業内容にかかわらず、また、小学校から高等学校まで英語を学んできたにもかかわらず、学び方を意識できず、学び方がわからない状態で多くの生徒が高等学校を卒業したことになる。
 英語に限らず、学び方がわからないという子どもは増加している。「子どもの生活と学びに関する親子調査2022」(東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所、2023)によれば、2019年から2022年にかけて、「上手な勉強のしかたがわからない」という回答は、小学4~6年生で42・6%から61・1%に、中学生で60・0%から68・2%に、高校生で68・7%から73・2%に増加している。
 「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体化の充実や生成AIの普及など学校教育をめぐる状況が変容しているなかで子ども自身が自分に合った学び方を選択できるようになることが肝要である。また、そのためには、学びに関する高い専門性と児童理解・生徒理解に基づいて、一人ひとりの学びを支援する教師の役割がますます重要になるだろう。

~図書教材新報vol.240(令和7年4月発行)巻頭言より~

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