第36期学校教材調査会理科専門委員
藤井 千惠子
文部科学省は令和6年12月25日、中央教育審議会に「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」諮問した。これからの時代にふさわしい学習指導要領の在り方について諮問したものである。そこでは現状における課題と四つの審議事項を挙げている。すでに各部会で審議が進められ、その結果をふまえて次期学習指導要領が示されることになる。
ところで、現行の学習指導要領の趣旨等はどれだけ各学校の教室の隅々まで浸透しているのか、趣旨を生かした授業がどのように実施されているのか、その結果どのような児童生徒が育っているのか、振り返りたいものである。学校には解決すべき課題が山積しており、振り返る時間の確保は難しいかもしれない。しかし、児童生徒や地域のことをもっとも理解しているのは教職員の方々である。教育課程実施の主体者であり、授業等の実践者としての立場から振り返ってみたらどうか。
例えば、学習指導要領解説の総則編「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」のの記述を確認してみよう。示されている例からも自らの授業は児童生徒が主体的に学ぶ力を本当に育てていたか等を振り返ることができる。同様にそれぞれの立場から現行の総則編の趣旨を生かした実践が行われているかどうか考えてみたい。こうした取組を通してこそ次期学習指導要領の理解を深めることが可能となる。
さらに、諮問内容に関わるさまざまな資料も示されており、世界のなかでの日本の位置付けや社会の状況等を理解することができる。予測が難しい社会にあって、学校には長期的な見通しをもって、これからの社会を生き抜く人間を育てることが求められている。次の時代を担う人間に必要なことは何か、自分事として捉えることである。学校教育に関わるすべての方々とともに今後の各部会での審議内容に関心をもち、次期学習指導要領の行方に期待したい。
~図書教材新報vol.241(令和7年5月発行)巻頭言より~