一般社団法人日本図書教材協会副会長
広島大学名誉教授
二宮 皓
2024年4月の全米の公立学校の教員等(1、583人)を対象とする「OER・教科書使用状況」調査結果を紹介しながら、中教審デジタル教科書推進WGの審議まとめ(紙とデジタル教科書の使用)の課題について考えてみたい。
・教科書の使用―83%が学校で決められた教科書を使用。
使用義務はないが、多くの教師は適切に使用している。日本では教科書の使用義務がある。
・ハイブリッド使用―60%が紙とデジタルのハイブリッド使用。
紙の教科書のみ、またはデジタル教科書のみは、19%、21%と少なく、ハイブリッド使用が多いが、その経年変化(3年間の間)では、紙の教科書のみの割合が減少し、ハイブリッド使用が49%から60%に増大。デジタル教科書のみの使用はあまり変化なし(19%→21%)。中教審は今後、3つの形態の中から地方公共団体の選択に任せるとしているが、ハイブリッド使用に関するガイドブックや研修が必要となるだろう。
・学年によるデジタル教科書の使用に配慮?(中教審)
米国の調査では、低学年でのデジタル教科書のみの使用が12%(中等段階で25%)、紙の教科書のみの使用は26%となっている。他方、ハイブリッド使用については学年による差はない(60%前後)。ハイブリッド使用を基本とし、適宜授業の展開において学年差を考慮すること(教師の裁量)が適切か?
・紙かデジタルか―生徒の学びは?
紙の方が「生徒がよく学ぶ」(57%)と考えられ、デジタルは「柔軟性に富んでいる」(70%)としている。近年北欧では紙の教科書への回帰がみられる。この課題は、教師の経験と知見に任せるのがいいのかもしれない。エストニアでは教師の裁量を尊重することで成果をあげている。
【資料】Bay View Analytics (2024), Conflicted Digital Adoption: Educational Resources in U.S. K-12 Education.
~図書教材新報vol.247(令和7年11月発行)巻頭言より~
