vol.249教材研究の重要性

一般社団法人日本図書教材協会会長
辻村 哲夫

 昨年9月、香川大学で開催された日本教材学会の大会に参加した。「深い『探求』の学びに導く教材の在り方」をテーマに3つの研究プロジェクトと9分科会・33の研究発表があった。「教材」には①テスト・ワーク等の資料のほか、②指導の内容の意味もあるが、発表の内容は両分野にわたり、いずれも示唆に富む興味深いものだった。
 具体例をいくつか紹介すると、ある研究プロジェクトの発表は、教師・研究者・教材会社の協力による研究で、「図書教材」は一斉授業の画一性を打破し個別学習や知識の定着を図る点で強みをもつが、デジタル教材出現の時代を迎えて今後いかにその特徴を発揮していくかの課題を提示するものだった。教材の歴史を辿りながらの時宜を得た発表だった。
 ②の意味での発表例を、参加した「音楽・美術・家庭・道徳」分科会での事例で紹介すると、
・伝統芸能「エイサー」を教材にして児童生徒を単なる鑑賞者から地域の文化・歴史の継承者の自覚をもった存在にまで高めた実践
・スポーツ飲料の栄養成分表示を教材にして食生活改善の意識向上を図り、同時に算数の比例・割合の計算力を高めた実践
など、いずれも、学ぶことの意義や社会との関わりを理解させることで、児童生徒の学力・学習意欲を高めたよい実践・研究発表だった。
 現在審議中ということもあって教育界の関心は次期学習指導要領の改訂に向きがちだが、学習指導要領に示された教育内容を着実に児童生徒に身につけさせるには教材が不可欠だ。
 教材の良否は児童生徒一人ひとりの学力の定着・向上の成果に直接的に反映するだけに、実績評価と研究に基づいた工夫・改善が常に求められる。そのためには、教材に関する実践・研究の発表・情報交換が重要だが、その機会を提供する場として日本教材学会の活発な活動に大いに期待したいと思う。

~図書教材新報vol.249(令和8年1月発行)巻頭言より~

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