一般社団法人日本図書教材協会会長
辻󠄀村 哲夫
昨年、文科省の有識者会議から今後の教育課程等の在り方に関する「論点整理」が公表された。
この「論点整理」を踏まえて、今年は中教審で次期学習指導要領の審議が始まる。「論点整理」でも多岐にわたる教育課題が挙げられているが、中教審には特に増え続ける不登校児童生徒の問題を直視した審議を望みたい。
このことを指摘するのは、昨年文科省の1県3市を対象に実施した委託研究でこれまで不登校の主な要因が「無気力・不安」とされてきた児童生徒のうちの相当数が、「授業が分からない」「宿題ができない」「成績が下がった」ことなどが不登校のきっかけになったと回答していることが明らかになったからである。
これまで教師の判断のみに頼ってきた要因分析が、児童生徒の生の声を直接聞くことでより具体的なものになり、この問題への学校の取組みもより明確になった。今回の委託研究は大変意義深いものと言えよう。
学校に通うのは、知識・技術等将来の「生きる力」を育むためである。言うまでもなく授業はそのためのものだ。それが「分からない」のでは学校に行きたくなくなるのは、ある意味当然の帰結と言えるのではないか。
今日いじめや校内暴力の問題も深刻だが、その大きな要因に、実は不登校と同様「授業が分からない」ことがあるのではないか。
「授業が分かる」ためには、もちろん本人の努力が必要だが、分かる指導も重要である。
その授業の内容の基準となる学習指導要領の重要性は言うまでもない。しかしその議論は、とかく理想を追って学習内容を過大にしがちである。学習内容の量も程度も適切でなければならない。中教審には、児童生徒の学びの実態を十分に踏まえた審議を望みたいのである。
新学習指導要領の下、指導に学習に努力する学校・教師・児童生徒に我々も良い教材を提供してしっかりと応援していきたい。
~図書教材新報vol.237(令和7年1月発行)巻頭言より~