一般社団法人日本図書教材協会監事
筑波大学人間系教授
清水 美憲
昨年10月、中教審の初等中等教育分科会の教育課程部会に算数・数学ワーキンググループが設置され、義務教育修了時や高等学校卒業時に身につけておくべき資質・能力とは何かという観点から、算数・数学科の目標と「見方・考え方」の検討、学習内容や育成を目指す高次の資質・能力等の検討が進められてきた。
現在の各教科等のワーキンググループでの議論では、「見方・考え方」について、教科等を学ぶ本質的な意義の中核を示すものであり、学校卒業後の人生でも豊かに働くものと位置付けられている。「数学的な見方・考え方」についても、従前より社会との接続を意識したものとなった。
実際、現行学習指導要領での「数学的な見方・考え方」は、事象を数量や図形及びそれらの関係などに着目して捉え、論理的、統合的・発展的に考えることと規定されている。これに対し、本稿の執筆時点での案は、「事象や言説を数理の視点から捉え、論理的、統合的・発展的、批判的に考察すること」という形で示されている(傍線は清水)。
ここで「言説」とは、さまざまなメディアにおいて提供される情報や、社会における論議等も含むもので、考察の対象が従来の「事象」から広げられている。さらに、現行学習指導要領では主として統計領域の学年目標に登場する「批判的」という用語が、教科全体の目標の記述で用いられることになった。この「批判的」という用語自体は、ネガティブな意味ではなく、あくまで建設的・創造的な目的で行われる思考に焦点化するものである点に注意がいる。
社会の変容を背景に、書店に「クリティカルシンキング」に関する書籍が山積みされるようになって久しい。算数・数学科の親学問は、公理や公準を前提として定義を共有し、論理的な議論(論証)が進められる数学である。この教科だからこその「批判的に考える力」育成のための教材開発が、小中高校を通しての重要な研究課題になるに違いない。
~図書教材新報vol.254(令和8年6月発行)巻頭言より~
