第38期学校教材調査会算数科委員
武蔵野市立第二小学校校長
全国連合小学校長会会長
松原 修
小学生の頃の私は、「何としても百点を取らなければならない」というプレッシャーを常に感じていました。一問でも間違えると母の厳しいチェックがあり、見たいテレビもお預けになってやり直しをさせられたからです。しかし今、改めて当時を振り返ると、本当に価値があったのは百点という結果ではなく、「間違えた問題と向き合い、やり直す過程」であったと、母への感謝とともに深く実感しています。
令和となった現代でも、点数が高いほど良いという意識は根強く、それが子どもたちの自己肯定感に大きく影響することさえあります。その意識が強すぎるため、近年のテストなどの教材には、子どもたちが過度に苦手意識を持たないよう、取り組みやすい工夫が随所に見られます。私が長く委員を務めた学校教材調査会でも、「もう少し手応えのある問題を」と提案すると、現場での使いやすさを考慮すると難易度の調整が非常に難しい、という各社担当者の切実な声を耳にすることがしばしばありました。
これは、子どもたちの意欲を削ぎたくないという教員の配慮の裏返しでもあります。しかし、経験の浅い若手教員が増加している現在の学校において、授業の質を支え、高めていくために重要なのは、教材の質にほかなりません。適度な手応えのある優れた教材こそが、子どもたちの深い学びと、教員の良質な授業づくりを導く羅針盤となるのです。
現在、中央教育審議会では次期学習指導要領の改訂に向け、新しい「評価のあり方」の検討が進められています。従来の知識の確認にとどまらず、論述や記述の充実などを通して「思考・判断・表現」を多角的に見取ることのできる、質の高いテストや教材の充実は、これからの教育における喫緊の課題です。各社が培ってきた英知を結集し、子どもたちが間違うことを恐れず挑戦できる、次の時代にふさわしい教材が創出されることを心より期待しております。
~図書教材新報vol.255(令和8年7月発行)巻頭言より~
