第38期学校教材調査会理科専門委員
国士舘大学体育学部こどもスポーツ教育学科客員教授
喜名 朝博
端末の更新や通信速度の改善が進んでも、依然として解決されない課題がある。それは子どもたちの机上の狭さである。教科書、図書教材、ノート、ペンケースに加え、端末を置くスペースなど残されていない。結果、必要なものをその都度取り出すことになり、子どもたちの思考や学びが頻繁に中断されることになる。
児童用机の天板は新JIS規格で650×450㎜以上と定められているが、これは1999年に決まった基準である。一方、現在の教室の広さはおよそ64㎡、校舎の建て替えによる教室拡張や1学級20人程度への少人数化を行わない限り、机を広くしても教室全体が窮屈になる。
では、子どもたちの机上を広くするために今できることは何か。それはデジタル教材の真のシームレス化と質的向上である。これまでのデジタル化は、紙の教科書や資料をそのまま画面に移しただけの「紙のデジタル化」に留まっていた。その結果、紙と端末の両方を机上に広げる必要が生じ、むしろ圧迫感が増すという本末転倒が起きている。
子どもたちの学びを止めないためには、端末内で教科書や資料の参照、思考ツールによる整理、ノート記述、振り返りが一元的に完結するオールインワン型の学習環境への進化が不可欠である。机上用により大きいモニタを設置すれば視認性は向上し、手書き入力のデジタルノートを実装すれば、思考の速度に入力が追いつく。
机上が整理され認知負荷が下がることで、デジタルは本来の強みを発揮する。試行錯誤の過程が可視化され、学習のプロセスが蓄積されることで、自分の思考の変容を客観的に捉えることができ、リフレクションの質は劇的に高まる。
物理的な制約をデジタル化によって解消し、学びの余白を生み出すこと。そして、紙とデジタルの強みを的確に見極めて授業を設計する教員の指導力。この二つが噛み合ったとき、子どもたちの学びは最大化されることになる。
~図書教材新報vol.257(令和8年9月発行)巻頭言より~
