vol.258読書の変化に私たちができること

第38期学校教材調査会国語科専門委員
筑波大学人間系教授
日本読書学会副会長
長田 友紀

 近年の調査によれば、「読書習慣」や「メモを書く」といった読むこと・書くことの積み重ねが子どもたちの読解力や思考力に影響することが示唆されている(一般社団法人応用脳科学コンソーシアム「デジタル時代の学生に対し読み書きの実態を調査~「書く」ことと「読む」ことの累積効果が明らかに~」2025年https://www.can-neuro.org/press-release-2025-09-01/)。
 この重要な一角を占める読書習慣について、大きな地殻変動が起きていることを示すのが、稲田豊史『本を読めなくなった人たち―コスパとテキストメディアをめぐる現在形―』(中央公論新社・2026年)である。若者たちへの数多くのインタビューに基づき、その指摘には大いに納得させられる。
 同書によれば、三十代より上はまだ「テキストメディア」であるが、十代から二十代にかけてはすでに「動画メディア」が中心である(287頁)。ただし、いずれもスマホにより「短文のネット記事とSNSにどっぷり浸かっ」(86頁)ているため、本が読めなくなっている。「本を読まない」のではなく、いわゆる学力が高いとされる子でも「本が読めない」というのである(88頁)。またデジタル教科書や電子書籍などの普及が進みつつあるが、情報提供系の文章では紙の方が理解しやすい、などの興味深い調査結果も紹介されている(183頁)。
 子どもたちを取り囲むメディア環境が大きく変容しつつある中で、紙の本を手に取って読む文化を少しでも長く維持するには学校教育に頼るほかはない。それは文化の保護だけでなく、子どもたちの成長や広い意味での学力を支えることにもつながるのである。まずは教師が読書をし、その姿を子どもたちに見せながらもっと語り合う必要がある。各種ドリル等の教材も、読書へいざなうような工夫を随所に仕掛けていくことが肝要になるだろう。

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