vol.218 DXの時代がやってくる

一般社団法人日本図書教材協会理事
東北大学大学院情報科学研究科教授
東京学芸大学大学院教育学研究科教授
堀田 龍也

最近よく耳にするデジタル・トランスフォーメーション(DX)。DXに向かう段階には3段階あることが知られている。

第1段階は、紙をデジタルにする段階である。たとえば紙の資料集をデジタル資料集にすることなどがこれにあたる。

第2段階は、デジタルの利便性をどんどん追求していく段階である。デジタルの強みを活かしてフルカラー拡大できるようにする、関係がある箇所をリンクで繋ぐ、時間制限を付けてみたり、取り組み量をグラフにしたりもできる。

第1段階は、従来のやり方をデジタルにしてみただけのことに過ぎない。しかし第2段階は、紙の時には得られなかったデジタルの利便性が享受される。もちろん紙の方が便利なことは残るから、一気に紙が廃止されるということはない。それでも、デジタルの利便性の積み上げが繰り返し人々に享受されるようになる頃、「これからはデジタルの方をデフォルトにした方が便利なんじゃないか」という判断にいつか行き着くことになる。

これが第3段階のDXである。デジタルの利便性を活かした発注方法に変わり、発送は早く、ミスは減少する。倉庫も減り、人員が削減される。印刷経費と送料が浮く。教材はクラウドに置かれるようになるので、訂正は楽になる。教科書のどの部分に教材のどの部分が対応しているかをデジタルならリンクで表現できるし、おそらくいずれは学習指導要領コードの活用が進んで自動リンクになる。学習ログが一元化されるようになれば、デジタル教材のどの部分がよく利用されているのか、改善が必要なのかはリアルタイムでわかるし、エビデンスを基にした改善がいち早くなされるようになる。

学校現場のデジタル化は加速中である。DXされた世界は、今はまだ夢物語に聞こえているかも知れないが、おそらく数年でここに達すると予想される。学校や教材業界の準備はどこまでできているだろうか。

~図書教材新報vol.218(令和5年6月発行)巻頭言より~

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