vol.220 教員の職場環境整備が喫緊の課題

一般社団法人全国図書教材協議会相談役
佐野 金吾

学校現場からは30年以上も前から訴え続けていた教員の勤務に関わる環境整備への取り組みが具体化し始めた。教員の職場環境の改善に必要と思われることの一つに学級定数の削減があげられる。中教審答申(「令和の日本型学校教育」(2021年1月26日))では、すべての子どもたちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びの実現を目指すとあり、学習指導要領では児童生徒一人ひとりに「生きる力」を育む「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を求めている。このような改善に取り組むには小・中学ともに学級定数が40人では難しいというよりも不可能に近い。35人学級への取り組みは学校現場にとって朗報ではあるばかりでなく、保護者からも賛意の声が聞かれる。この制度が義務教育段階のすべての学校で早急に実現されることを強く願っている。

授業改善には子ども理解と教材研究が欠かせない。そのためには、教員の勤務時間内における時間的なゆとりが必要である。このことに関しては教員の週の授業時数を課題として取り上げる動きもあり、教員の働き方改革としても的を射た取り組みといえる。現状は、小学校高学年の教員の週の持ち時数は20コマ程度、中学校教員では22~24コマ程度であるが、中学校教員には放課後の部活動がある。このような状況のなかで教員は、何時、どのように子ども理解や教材研究に取り組んだらよいのか。

また、来年度から一部の教科でデジタル教科書が使用されることになる。GIGAスクール構想によって児童生徒一人ひとりにICT端末が行き渡ってはいるが、児童生徒一人ひとりの活用のスキルに個人差が大きく、学校現場ではその対応に苦慮している。教職員定数の改善が中教審答申を学校現場で実現する上での喫緊の課題といえる。

~図書教材新報vol.220(令和5年8月発行)巻頭言より~

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