vol.221 学力調査の結果を考える

一般社団法人日本図書教材協会会長
辻村 哲夫

令和5年度の全国学力・学習状況調査の結果が公表された。メディアは一斉に英語の「話す力」「聞く力」の課題を取り上げているが、他の教科についてはどうであろうか。

例えば、小学校(6年生)の算数。出題された問題は、「厚さ5センチの国語辞典と4センチの漢字辞典を学級の人数28人分並べた長さを表す式、ア5×28+4×28とイ(5+4)×28について、傍線部分の意味を問う」というものだ。正解は、アが国語辞典28冊を並べた長さ、イが二つの辞典の厚さを合わせた長さであるが、正答率は70・5%だった。

国語はどうだろう、令和4年度の調査の例になるが、「録画」「反省」「親しむ」の漢字の書き取りの問題で、正しく書けた者は、それぞれ65・3%、58・9%、67・2%だった。

算数も国語も3人に1人が正答出来なかったことになる。これだけの例で学力全体の評価を断定してはならないが、前記の問題が基礎的基本的な問題だけに、我が国の子どもたちの学習状況が気にかかるのである。

文科省は、算数については「示された日常生活の場面を解釈して数量の関係を捉え、問題の解決方法を式や言葉を用いて説明できるような力に課題がある」、国語については「日常生活において日記を書く場面などで漢字を使うことを意識した取り組み、漢字を使おうとする習慣を身に付けるようにするなどの指導を一層徹底する必要がある」とコメントしている。

的を射た指摘だが、そのためには、子ども自身の努力と指導者の親身の指導が必要だ。

それを実現するには「ゆとり」のある学習・教育環境が不可欠で、過重なカリキュラムの是正、教師の多忙な勤務状況の改善などの施策は急務である。また、子どもに「分かること」の喜びや達成感を味わわせるような教材の役割も大きい。

全体として高い評価を受けている我が国の義務教育だが、油断は禁物である。

~図書教材新報vol.221(令和5年9月発行)巻頭言より~

TOP