vol.222 「学び」の転換期と教材研究

一般社団法人全国図書教材協議会会長
細谷 美明

今年度の全国学力・学習状況調査の英語の結果について、「話す力」の平均正答率が著しく低いことが話題となっていた。国立教育政策研究所は難易度が高かったと説明しているが、それ以上に気になる点がある。それは「社会的な話題について自分の考えや理由を表現すること」に課題があるという点である。これは英語だけの話ではなく国語の調査でも同様の傾向がみられる。さらに言えば本調査が行われてからずっと指摘されていることでもある。

文部科学省(文科省)は現行の学習指導要領改訂の趣旨で、これからの変化の激しい社会を生き抜くために汎用的能力の必要性を訴え、学習内容を人生や社会の在り方と結び付けて理解し生涯にわたって能動的に学び続けるよう「主体的・対話的で深い学び」の実施を強調した。調査結果を見る限り改善されているとは言い難い状況だ。一方で同調査は、その「主体的・対話的で深い学び」の実施状況は年々増えているとしている。

考えられることは「主体的・対話的で深い学び」は方法的には実施されているが内容的には不十分なのではないかということである。学校に訪問し先生方の授業を見るとそのことがある程度確信に変わる。先生方は扱う学習内容が自分たちの生活にどう関わりがあるのかという視点で授業を創っているのだろうか? 言い換えれば、教科書通りの授業ではなく教材研究といったプロの教師としての味付けをしているのかということである。さらに子ども一人ひとりが自分の生活との関わりをどう感じているのか意見表明の機会を設定しているのか問いたくもなる。ついでに言えば、こうした教材研究という手間暇がかかる授業創造の時間を文科省は先生方に与えているのか。「学び」の転換。そのための条件整備を考える時期に来ている。

~図書教材新報vol.222(令和5年10月発行)巻頭言より~

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